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茶の湯釜 高橋敬典の世界

茶の湯の文化を支える風雅な様式美と移ろう季節への想い。その限られた制約の中で、芸術の粋にまで高める名匠の技と心。燃え滾る鉄に魂を込め、生涯を通して釜肌を研究し続けた重要無形文化財保持者(人間国宝・茶の湯釜)、高橋敬典の世界を御紹介致します。

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侘び、寂びの世界を表現する

和銑を用い、釜全体の調和を考え、
上品で落ち着いた作風が高橋敬典の持ち味だ。


■白石和己 (しらいし・まさみ) 山梨県立美術館長


 
●やわらかな趣をもつ作風

高橋敬典の自宅は山形市銅町にある。ここは慶長年間(1596~1615年)、領主となった最上義光によって、当時、鍛冶町にいた鋳物師たちを移して銅町としたのだという。
それより遡って、平安時代の康平年間(1058~65年)、源頼義が奥州平定のためこの地に赴いたとき、頼義に従っていた鋳物師によって、馬見ケ崎川の砂や付近の土が鋳物の型作りに適してい
ることが発見され、彼らがここにとどまったことによって、山形の鋳物がはじまったのだと伝えられている。高橋は現在、自宅の近くに経営する鋳造会社があり、その一画に工房をもっていて、そこを中心に制作活動を行っている。敷地の一隅には馬見ケ崎川で採取した砂がうずたかく積まれている。

高橋は鋳造業を家業とする家に生まれた。鋳造技術については早くから学んでいたが、父の死によって十八歳のとき家業を継ぐこととなる。高橋が、茶の湯釜に本格的に取り組むようになったのは、長野埋志に指導を受けてからである。1950年(昭和25年)から、山形を訪れるようになった長野は、十四、五年間にわたって、毎年数か月ほど滞在し、釜の制作や指導を行った。高橋は長野から技術的な点はもちろん、制作に対する心構えなど、多くのことを学んだという。そして51年には、早くも日展に入選を果たした。日展では入選を続けたが、その後、日本伝統工芸展に発表の場を移すこととなる。日本伝統工芸展においても実力を発揮し、第十回展および二十三回展では受賞を果たしている。
また審・鑑査委員などの仕事を重ねて、茶の湯釜制作の第一人者として認められるようになっていった。高橋は長野から受けた指導をもとに、芦屋釜や天命釜などの古典を研究するなどして意匠や技術などの研鑽に努めた。もちろんそこには、長い歴史を有する地元の山形鋳物の伝統が深くかかわっているのだろう。高橋は、砂鉄を原料とした和銑を用い、鋳型の原料の砂や土は、山形鋳物の伝統で
ある地元の川砂や土を使用して制作を行っている。また、彼の工房には数多くの箆(へら)が整然と置かれている。棒箆、笹箆など、文様によってさまざまな箆を使い分け、定評のある優れた箆押し技術によって独白の文様を生み出している。肌造りにおいても、高橋はさまざまな工夫によって、深い味わ
いをもった美しい釜肌に仕上げている。

●侘び、寂びの世界を表現する
 
茶の湯釜には、さまざまな約束事があり、厳しい制約の中で個性を発揮することは容易なことではない。高橋は使いやすく美しく、しかも自分独白の美を表現した作品を制作するために、最初のデザインに何か月もの時間を費やす。この段階で釜の形や文様はもちろん、蓋や撮み(つまみ)など細部についても決定する。高橋がいつも心がけているのは全体の調和、デザインの統一だという。そのため釜の形と同時に、胴などにほどこされる文様、鐶付の意匠、蓋の撮みなどの形についても、全体の形や文様が統一的に考案されるのである。高橋の作品は、新しい表現の場合はもちろん、伝統的な文様の場合でも、古典の優れた部分を取り入れながら、現代的な感性を込めている。たとえば、「和銑 平丸釜」では、片輪車という王朝風の文様と釜肌のやさしさを表現することにより、典雅な雰囲気を醸し出しながら、リズム感のある車輪の配置と水流を直線的に描くことによって、すっきりとした現代的な表現としている。現代の作家として、独自の創作を追究しようとする姿勢は、高橋の作品に共通して見られるところである。高橋のそうした姿勢は、穏やかな深い奥行きのある造形へと向かっているのである。高橋敬典の作品は、特に奇抜な造形は見られない。上品な雰囲気、落ち着いた穏やかな作風、やわらかな趣をもつ作品が多い。それでいて常に新鮮な感覚を伝えている。それは茶の湯釜ということを意識し、詫び、寂びの奥深い世界を具体的な造形として表現しようとするものである。その中で、現代に生きている作家として、創作性や自分の美に対する思いを表現しようとする意識の高さが、新鮮な感覚を生み出すのである。

朝日新聞社 週刊「人間国宝」より転記

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